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トンデモ科学部の先輩 18(完)

先輩が私の近くに来て、目の前が白衣で一杯になって、、、

たぶんハグされてる。

あまりの出来事に、動揺を通り越して放心してる。先輩の匂いが広がって、、、いや、なんか化学物質の嫌な匂い。

先輩が寂しい声で言った。

「自分でもよく分からない。どうして悲しいのか、悔しいのか。」

どうにか、口を動かしてみる。

「先輩は悪くないです。もちろんあの元カノも、、、私も変なこと言っちゃって、ごめんなさい。先輩は自然な反応をしただけです。ほら、先輩の好きな自然現象とやらを、否定する気ですか?」

「君を傷つけた。」

「いいですよ。先輩のおかげで多少タフになりましたから。」

先輩は少しの沈黙のあと、静かに口を開く。

「私は頑固な人間だ。それは分かってる。それが時に人を傷つける。これも分かる。でも、君を傷つける私というのは、本当に認めたくない。」

「先輩、、」

「君は大切なんだ。」

その言葉には、先輩の全部が詰まっていると思った。この不器用な言葉の主を私は知っている、先輩。私の大好きな、先輩。ふと涙が出てきて、どんどん止まらなくなる。

「先輩はずるいです。デリカシーなさそうにして、ほんとはとっても優しくて、、」

自然と笑みが出てきた。

「いいですよ、先輩が元カレのこと忘れられるまで、一緒にいてあげます。それで、それからもずっと一緒にいますから。」

すると先輩はふと私を引き外して戸惑ったような顔をした。

「どうしたんですか?」

「ずっとというのは不可能だろう。」

「、、、可能ですよ。」

「なぜそんなことが言える。化学史を裏切るつもりで言っているのなら、、」

「恋は自然現象ではなくて、人為現象だからです。だから可能ですよ。」

先輩は驚いたような顔をして、そして笑った。泣き疲れたような赤い目を細めて。

 

 

第一部 完