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(物語)トンデモ科学部の先輩 1

私は九条唯。戦前戦後の日本を支え、リードしてきた世界に誇る九条財閥の息女。なんだけれど、正直普通の家に生まれたかった。
ガチャ
「唯様、着きました。」
(なにあれ!リムジンじゃない??もしかしてお金持ち?!)
ああうんざり。今日は強烈爆裂リッチェスト高校の入学式。猛反対したけど、結局リムジン送迎になった。初日からこんなことして、絶対友達できないじゃない。私の高校生活はもう台無しね。
「なんだこの長い車は。邪魔だ。」
「ん?」
ボサボサ髪で白衣姿、胸元から制服を少しのぞかせている男がいた。おそらくこの高校の生徒だろう。
「私もそう思う。」
「君は、、矛盾が激しいな。」
そう言って男は不思議そうな顔をしてスタスタと歩いていった。
「なんと失礼な、、お嬢様、米兵を派遣致しましょう。」
「いらない。」
「しかし、あのような服装で街中を歩くような者がお嬢様と同じ高校にいるなど、、ああ私のミスでございます。米兵を派遣致しましょう。」
「いらないって言ってるでしょ!」
「お、お嬢様、、」




「担任の松村秀一です。よろしくお願いします、、、
このように明らかなる生まれながらのエリートが集う我が校は、、、ああそれと、部活動にも力を入れています。2週間後の確定までにさまざま積極的に見学にいくように。それでは、解散。」


  

あれおかしいな。想像以上に、誰も話しかけてこない。登校時はやらかしちゃったけど、なんかいい感じにクラスに溶け込める流れを期待していたんだけれど、、
(あの方九条家の娘さんなんだって!えー!あの九条財閥の?!すごい、、たしかにお嬢様って雰囲気あるものねー!)
さっきからそれ聞こえてるってば。来て!話しかけて!
(でもなんか、近寄り難いっていうか、、わかるー!お話しさせてもらうなんておこがましいわ!そうよねー!今朝なんてリムジンで送迎よ!えー!!)
うわあ、言われちゃった。やっぱりリムジンはもうやめさせよう。それと、なにしてるの私。待ってるだけじゃだめ、自分から話しかけなきゃ!
(あ、そうそう紅茶部の勧誘来てたから後で行こうよ!いいねいいね!私も行く!私もー!)
、、、




そうして放課後、クラスメイトは各々部活動体験に行くなか、私は教室に1人取り残された。

ガラガラ

「女いるか?女なら誰でもいいんだが、、おい君、私は論理論考実験科学部の部長、2年の松平慎二だ。さまざま話すべきことはあるが、とりあえず、私の部活に来たまえ。」
、、、今朝の男!っていうか女ってなに、女って。
「私はもう帰ります。ナンパはよそでやって下さい。では。」
「君、友達いないのかい。」
、、、!
「ここは中学も併設されてるから、高校からの編入組は孤立しやすい。」
「私もう帰りますから。」
(あれってトンデモ科学部の松平じゃない?新入生勧誘してるわね、あの子かわいそう。あそこって部員1人しかいないんでしょ?それは当然でしょう、あの人汚らわしいじゃない。だいたいなんでいつも白衣着てるのよ。あの子助けてあげよっか。)
「ねえちょっと。松平慎二さん。あなたいつになったら退学するんですか?」
今のうちに、、!!
「なに?って、、しまった、逃したか。」
「あんたのせいで校風が汚れるのよ。さっさとうせなさいドブネズミ。」
「おい、君でもいい。ちょっと来てくれ。」
「は?近寄らないで!お母様に言いつけますわよ。」
(うわ、、!さよちゃんのお母様に言いつけられたらあの男もうおしまいじゃない、、!お母様、理事長と仲良いんだって?そうそう、、それでこの前急に退学になった子も、、)



  
はあ、、今日も誰も話しかけてくれなかった。っていいやダメダメそんなんじゃ!自分からよ!自分から!私だって普通に友達つくって、放課後ファーストフード店に行ったりとか部活したりとか、、うう、、

ガラガラ

「よう。」
「、、!またあなたですか。そろそろ米兵呼びますよ?」
「べ、米兵、、?」
「では私はこれで。」
「ちょっと待ちたまえよ。」
「なんですか?」
「実験に付き合ってくれないかな。マーフィーの法則を検証しているところでね。研究員がどうしても必要なんだ。」
「私いろいろ忙しいので。」
「ほう?そのようには見えなかったが?」
うっ、、
「嫌です、嫌ったら嫌。」
「報酬はもちろん出そう。」
「いらないです。もう私行きますから、、」
「プリンなんかどうだね。」
、、、!!





「それで、朝から校門前に呼びつけて。何をするかも聞いてないんですけど。」
「見たまえ、あそこに曲がり角が見えるだろう。」
「、、、?まあ、見えますけど。」
「いつも遅刻ギリギリに走ってくる少女がいてね。その子は毎日あの曲がり角を、食パンをくわえて曲がってくるんだ。」
「なんでそんな典型的なヒロインがいるんですか。」
「そこでだ、君にわざとその子にぶつかって欲しい。そうすれば少女はくわえている食パンを落とす。」
「それで、マーフィーの法則を検証すると、、?」
「その通り。」
「自分でぶつかればいいじゃないですか。」
「それがね、、訳あってこの部活は教員に目をつけられていてな、意図的にやったとバレたらただの変質者だと決めつけられかねん。特に私は男だからね。その辺はかなり不味いだろう。」
「もとから十分変質者だと思いますけど、、じゃあ、家で自分で食パン落とせばいいじゃないですか。」
「それではダメだ。心からジャムが床につくことを恐れなければ、確率は上がらない。つまり実際に食べようという意思がある人間のみしか、被験体にはなり得ないんだ。それに、私は高いカーペットなど持っていない。さあ、そろそろくるぞ。君はもう行きたまえ。」
「なんで私がこんなこと、、」
「ああいまだ!もう行け!行け!走れ!」
「え?いま?」
「はやく!!おい機会を逃すな!はやくいけ!!」
「あー!なんなのよもう!!」

タッタッタッ!

「うわほんとに来たっ!!」
「んば!!!」
「あ、ええと大丈夫ですか、、?」
「いったた〜」
少女のそばには食パンが落ちていた。そして、ジャムは見えなかった。
「どうだ?!!おお幸先のいい結果だ!!」
「いっけない!遅刻遅刻〜!あ、ぶつかってごめんなさーい!」
あれ、、?
「さて、とりあえず実験は成功だ。」
「プレーンです。」
「え?」
「あの子ジャムつけずに食べてました。」
「、、、!!!!」

キーンコーンカーンコーン

「って、、そうじゃん私も遅刻じゃん!!どうしてくれるんですか!急がなきゃ!!」
「プレーン、、想定外だ、、私はなんて失態を、、」
「私もう行きますからね!」
「なぜジャムをつけない、、、?ダイエットか??家に侵入してあらかじめ全ての食パンにジャムをつけておくべきか、、いや大胆すぎる。では体型を気にさせないように毎日スタイルいいねってささやいてみるか、、?ああ!ああ!!ゆゆしいぞプレーンッ!!!!」








次回「入部!」
お楽しみに。