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(物語)トンデモ科学部の先輩 4

「宇宙に行くよ。」
また変なことを言う。部室の窓から流れ込む春の陽気が本当に心地よくて、今にも寝てしまいそうだ。
「なんで宇宙なんですか、、」
「宇宙空間における条件の違いを洗い出したくてね。さまざま実験してみるんだ。我々は無知なんだ。地球上での想定される結果が得られない場合、なにかしらのファクターを発見することができる、こうやって時には理論だけでなく経験的に試すことも重要なのさ。」
「ほんと、先輩ってバカですよね。個人の領域じゃないですよ。そもそも、どうやって宇宙に行くんですか。」
「開拓者はバカでなくてはならないんだ。行き方は、、まだ計画の段階だ。それよりも山場なのができる限り地球の環境に宇宙の環境を合わせ、また理論上の宇宙環境の制約を書き出す作業だ。ひとつ基準となるのは気体の条件、、理想気体であればなお検証しやすいだろう。」
「ふーん、、そういや宇宙に気体ってありましたっけ。」
「多少ね。一般的に低圧かつ高温であれば成立するのだが、、もちろん低圧であることは元から成立している。そこで高温状態にする必要があるのだが。」
「へえ。」
「恒星の熱エネルギーの影響の及ぶ範囲に移動することができれば、これは達成できると考えている。まあ正確にいえば移動するより軌道をあらかじめ計算しておいて惑星に移動してもらうということなのだが、、、」
今日も平和だ。放課後先輩とふたりで、部室でのんびり。暇だ。
「今日は実験とかしないんですか?」
「今日は理論を練る。」
「そうですか。あ、、先輩。タピオカって知ってます?流行ってるらしいですよ。行きましょうよ。」
「しかし、、私もまた熱エネルギーで焼死してしまうかもしれない。それほど頑丈な装備を一体NASAはどのように、、、」
「おーい、せんぱーい。」
「なんだ。」
「タピオカ食べに行きましょうよ。」
「動物園はフードパークじゃないぞ。」
「たぶんそれカピバラです。」
「、、」
「いいから行きましょう。ハマるかもしれないですよ。」
「そんなわけないだろう。あんなのただの粘性のあるたまごボーロじゃないか。」
「それはちょっと違うでしょう。って、先輩タピオカ知ってるじゃないですか。あれ、もしかしてさっきボケたんですか?え?ボケたんですか?ボケたんですか??」
「祟るぞ。」
なんと非科学的な、、





「おいしいー!」
「おいしい。」
顔とセリフが全然一致してない。
「ほんとにおいしいと思ってますか?」
「顔にあまり出ない方なんだ。タピオカドリンクは、評価としては想像以上と言わざるを得ないよ。」
あ、いまちょっと瞳孔大きくなった。
「じゃあ、タピオカもう一件気になってたんですけど、行きます?」
「そうだな、、糖分補給はいい思考に繋がるから、まあ悪くないだろう。」





「私の声かけに合わせて、ベビタッピ!と言って下さいねー!せーのっベビ、、あ、もう一度やりましょうか?」
「先輩、ほら、やらなきゃ。」
「なんだその掛け声は。」
「美味しくなるおまじないですよー!さあ、行きますよ!せーのっべびたっぴ!!!」
「べびたっぴ、、、」
先輩、、ちょっとかわいい。





「あれは非科学的だった。なんの根拠もない。」
「祟るぞとか言ってた先輩も大概ですよ。」
「それとこれとは別だ。それと、祟りはかなり信頼度高いぞ。」
「え、、?」
「なんだ、どうした。」

わなわな

「おい九条、道中でしゃがみ込むとは、、なにかの実験か?人混みのメカニズムの研究か?教えてくれ興味深い。」
「祟らないで、、」
「なんだ?」
「祟らないでぇ、、ううう、、」
「お、おい泣くな!」
「う、う、うぁぁ、ぅぁあ、、」
「まずい!これは涙腺の初期微動継続時間なるものだ!この間にできることそれは、、」
「うわぁぉぁうわぁぁぁーん!!!」
「と、とりあえず他人顔!!」






次回「米兵!」
お楽しみに。