(物語)トンデモ科学部の先輩 10
「じいや、私って甘えん坊なのかしら。」
「そんなことはございません。お嬢様には生まれながらの使命がございます。ですからそれ以外は私めらにお任せください。」
「使命ってなによ。」
「もちろん、九条財閥を継ぐことですよ。」
「嫌だって言ったら?」
「甘えん坊です。それもとびっきりの。」
「なにそれ。じいやが悪いんじゃない、、」
じいやが、いつもいつも、、
「お嬢様?」
「じいやが全部やっちゃうから!私がこんなふうになってしまったんじゃない!!だから嫌気がさしたのよ!九条財閥を継ぐってなによ、継げれば人間性なんて崩壊しててもいいの?!私はただの財閥の人形?!」
言っちゃった。
「お嬢様、それは違います。」
分かってるよそんなの。全部私が悪い。いまの私を作ったのは私。
「お嬢様の人間性は崩壊なんてしていません。」
「は?」
「一人前に罪悪感を抱いて、辛くなって、はたまた素敵に恋をして、嫉妬をして、なんて豊かではありませんか。人はそうやって成長していくのですよ。」
「じいや、、恋はしてない、、」
「ホッホッホ、そうですね。それにしても、確かに私も愛護が過ぎたのかもしれません。」
「私、、西園さんのところに行きます。」
「分かりました。お供します。」
「いいえ、私1人で行きます。そうでなきゃ、、たぶんダメなの。」
「そうですか。地下の監獄室302にいらっしゃいますよ。」
この家ってそんなに物騒だったんだ。
牢の中で、しゃがみ込んで俯く西園さんがいた。
「西園さん。」
「九条さん、、?」
「ごめんなさい。」
「九条財閥って凄いんですね。びっくりしちゃいました。」
笑みを浮かべないでほしい。
「私、嫉妬して、それで、、」
「なんとなく分かってますよ。」
「ほんとうに、、私どうしようもない人で、、」
「そんな顔しないでください。私、先輩のことは尊敬していますけど、好きとかじゃないんですよ。」
「え?」
「とりあえず、ここから出してくれますか?」
あ、そうだった。
牢から出ながら、おもむろに西園が続けた。
「あの人、変ですからね。尊敬はしますけど好きなんかなれないですよ。ははは!」
「じいや!いや、、、ううん。」
「どうかしたんですか?」
「私は好きです。先輩のこと。先輩の変なところ。馬鹿なところ。ズレたところで一生懸命なところ。」
「ふふふ、そうですか。」
ガサッ
「だれ?」
そこには松平先輩がいた。
「すまん。君の執事が、君はここにいるから行ってやれと言われて。」
じいや、、説教じゃ済まないわよ。
「私はちょうど今来たところだ。だからその、なにも聞いていないよ。」
「いや、いいんです。さっきやっと分かったんです。私、言えるようにならなきゃいけないですから。」
「なるほど、、」
「わたし、、わたし、、、先輩のこと、、先輩のこと、、」
あれ、言葉が出ない。なんで。
「九条さん、、がんばって、、」
好き好き好き好き好き好き!!心の中ではこんなにたくさん言えるの!でも、、
「先輩、、」
次回「甘えん坊」