(物語)トンデモ科学部の先輩 17
「先輩!待ってください!」
「、、」
先輩は私に構わず足早に校舎へ歩いていく。
「先輩!ねえ先輩!」
校舎は七夕祭りを楽しむ人々で混み合っていた。そんななか先輩は人にあたろうとなんだろうと突き進むものだから、どんどん距離が離されていく。
「待って!先輩!!」
かろうじて遠くに見えるのは通路を曲がろうとする先輩。このまま、私の知らないどこかへ行っちゃうんじゃないかって思ってしまう。
「先輩、、、嫉妬してるんですか!!!」
先輩はすたっと止まって、でもこちらも見ずにそのまま去ってしまった。
先輩、、完全に見失った。でも、たぶん部室にいる。あの人は部室以外居場所なんてない。
ガラガラ
「え、いない、、」
電気もついておらず、ただ部室中の実験器具の数々が、窓から差し込む夕日に照らされていた。そのうちの一つが、私の顔が反射している。自分の顔を見ながらふと思い出す。この場所で先輩といろんな時間を過ごした。先輩の面影が見える。くだらない話を大真面目に話す先輩と、適当に先輩の話を聞く私の姿。
「楽しかったなぁ。」
なんでこうも暗い部屋というのは、過去のように思えてしまうんだろう。窓の向こうでは出店でガヤガヤした校庭が見える。なんだか別世界みたい。先輩と初めて出会ったのは、、たしか校門で、リムジンが邪魔だとかなんとか言ってたっけ。変わってないんだなぁ、先輩はずっと。私がお嬢様だろうがお構いなしに、粗雑で無礼で。先輩だけ、私という人を真正面から向き合ってくれた。そのあとは、、ああそうだ。プリンで誘き寄せられて、無理やり入部させられた。へへ、、笑える。
ガラガラ
さて、ここにもいないとすると、、どうしようか、校舎を全部見てまわろうかな。あ、そうだあの人見た目だいぶ変わってるじゃん!人に聞けばいいんだ!
「あ、あの、すみません、白衣を着た髪もじゃもじゃの男を見ませんでしたか?」
「ああ、たぶん見た気がする、、すごい形相で屋上の方に向かっていったよ。一体なんの用が、、え?ちょっと!」
私は、自分でもよく分からないけれど、屋上へ走り出した。先輩に会いたい。一気に抑えきれなくなる。先輩の姿を見たい。先輩のいる場所に、、私も行くの。もう言う。先輩に全部言う。私の気持ち、私の、、好きって気持ち。いろんな人にぶつかっていく。いろんな人に手に持っていたわたあめが付着していく。でも今はそんなことどうでもいい。嫉妬だって、、、先輩が嫉妬してたってなんだって関係ない。私は先輩が好きで、だがらこっちを見てほしくて、先輩の楽しそうな顔もっと見たくて、、、なにより私が先輩のそばにいたくて、、!!
ガチャ
「先輩!!!」
ふとこちらを振り向く先輩がいた。目はいつもより、、潤っていた。
「好きです。先輩のこと。」