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(物語)トンデモ科学部の先輩 9

「西園さん。大丈夫ですか?」

「あれ?私なにを、、?」

「よかった!!目が覚めたんですね!校内を散歩していたら西園さんが滑って転んで階段からとんでんころりんで気絶しちゃったんですよ。覚えてませんよね。いやあでも無事そうでよかったです!」

薬詰め込んで挙句ぶん殴ったなんて言えないよね。

「そうだったんですね!助けてくれてありがとうございます!九条さんは優しくもあるんですね!」

「いえいえ、名家の娘として当然ですよ。ふふ。」

名家の娘なんて言葉不服にも使ってしまったわ。さて、先輩の方はというと、、、

ガラガラ

「おい九条、はやく実験を手伝いに来てくれないか!いま大変なところなんだ!母校が全焼してもいいのか!!」

元気に研究しているようで、先輩には心配なんて無用です。

「いま行きますから。ちょっと待ってて下さい。」

「あら?その方ってもしかして、、」

しまった!変なやつとつるんでる私がバレてしまう。

「ち、違うんです西園さん!」

「あ、あのわたし!先輩の、、、」

「わーー!!!誰か分からないけど、実験手伝えばいいんですか?分かりました。誰か分からないけど付き合ってあげますよ!」

ごまかし方が最悪。

「あの、、私も手伝っていいですか?」

「え?」

「なんでもだれでもいいから早く来い。あぁ、半壊はいったかなこれ、、」

 

 

 

西園さんはなにを考えているんだろう。

「ていうか全然火事起きてないじゃないですか。」

「研究者は嘘をつくものだ。今からパスタ茹でるから、記録係を2人でやってくれ。」

なにを言っているんだろうこの人は。

「いいか、まず私の理論を説明する。君らパスタを茹でたことはあるだろう?ぎゅっとねじってぱっとはなすんだ。わかるか?」

一人暮らしを始めたとかいう先輩に頼まれて、数日前に私がパスタの茹で方を教えた。それをもう我が物かのように、、

「はい!分かります!」

西園さんの返事がすごい。目もキラキラさせて、、さっきから変だよね。薬の効果がまだ切れてないのかな。

「ところが、綺麗に等間隔の円をつくるのは難しい。それはなぜか。問題は視点にあるんだよ。」

なんか勿体ぶった喋り方ね。西園さんの前だからってカッコつけちゃって。

「パスタの前に立って「ぎゅっとぱっと」をやるのが一般的だが、それによって我々は本来よりパスタ束の重心が前後に傾いていることに気づかないんだ。つまり思ったよりパスタ束の上先がこっちを向いていたり向こうを向いていたりするというわけだ。それならばバラついてしまうのは当然だね。」

「なるほど!!」

「ではどうするか。フライパンの上から見下ろしてやればいい。実演しよう、九条パスタ。」

「先生トイレみたいに私を扱わないでください。」

「早くしろ母校が全焼するぞ。」

「もう嘘つくの面倒になってるじゃないですか。」

「持ってきました!!」

西園さん、、これはもう治らないだろうな、可哀想に。

「では始めよう、、ん?なんだこれは!!失明、、?!!視界がっ!どういうことだ?!!」

「先輩、メガネ取りましょうよ。真っ白じゃないですか。」

「問題ない!強行する!」

「いやそれじゃあ実験の趣旨が、、」

「カッコいいです!!強行しちゃいましょう!」

これだけ肯定してくれる人間がいたらさぞ気持ちいいだろうな。ああ、きったない円だなぁ。

「失敗。だが次は成功するだろう、、」

 

 

 

やっと終わった、、

「先輩、薬の効果がまだ残ってるみたいですけど。」

「薬、、?」

「そうなんだよ九条、私も同じ違和感を感じていた。だが、あれから数時間経っているんだ。効果は間違いなく切れているはずだ。」

ではなぜ、、?ていうかこの人鈍感っぽいけど好感持たれているのとか気付くんだ。ちょっと意外。

「なんの話をしているのかよくわからないですけど、、あの先輩!実はずっと言いたいことがあって、、私、先輩を、、先輩を尊敬してるんです!!!」

「え?」

やはり薬がまだ効果を、、?

「私いつも人に合わせてばかりで窮屈で息苦しくて、、」

「西園さん、、?」

「でもそんなとき、周りの目なんて気にしないで生き生きしている先輩を見たんです!私もそんな風になりたいって、ずっと思ってたんです!!」

わ?

「はあ。変わっているな君は。まあいい、とりあえず私はパスタを追加で買ってくるから、その茹でた素パスタを消費しておいてくれ。」

ガラガラ

いやいや、先輩って嫌われ者じゃん。それで私だけは、先輩のことちゃんと知ってるじゃん。それで気を許してもらってる関係とかじゃん。それで実験とか一緒にやってきたじゃん。ていうかまだ実験やんのかよ。

「松平先輩とお友達だなんて、九条さん羨ましいです!!」

先輩って人気だったんだ。先輩にとっては実験の手伝いしてくれれば誰でもよくて、、

「九条さん?」

あれ、なんだろ?恋のライバルってやつ?いやいや別に私は先輩のこと好きとか思ってないけど。でも、、なんなのこれ、別に悔しいとかじゃなくて、、悲しいとかでもなくて、、、

「私ずっと中学のときから先輩のこと見てて、九条さんって高校から入ってきたんですよね。中学の頃の先輩も凄かったんですよ!九条さん知らないと思うんですけど、先輩にはたくさん逸話があってそのなかでも、、」

なんか、、あれ?なにも聞こえないや、、

「うっ、うっ、、うう、」

「く、九条さん?!どうしたんですか?!」

ああ、そういや西園さんってモテそう。目とか大きくて、可愛らしいかんじで、胸も大きくて、、いいやもう。どうでも、、どうでも、、

「じいや、やっておしまい、、」

ガラガラ

「かしこまりました。」

ガシッ

「え?!なんですかなにするんですか!」

「来てください。」

「い、いやですよ!ちょ、ちょっと!!」

ガラガラ

「うぅ、、もうやだ、、じいやに頼っちゃった、、自分でなんとかしなきゃいけないのに。私いま、お嬢様しちゃってる、、、」

 

 

次回「松平先輩」